物申す散文

日常で見つけこと、思ったことを、書き散らかしています。

お布団

私は人生のほとんどの睡眠をベッドでとってきた。布団で寝るのは旅館に泊まるときくらい。日常から布団を使うことはほぼ皆無だった。

そんな私が、結婚をして、引っ越しをする際にベッドを捨て、布団での就寝を始めることになった。奥さんの布団への謎のこだわりに負けたからだ。

布団生活を始めたものの、正直「やっぱり、ベッドがいい」と何度も思った。

ふかふかしてない。天井が遠い。理由は諸々あるが、私はベッドを懐かしんでいた。

しかし、私は布団がベッドに確実に勝る点をすぐに見つけることとなった。

それは、疲れがとれるとか、眠りやすいとか、機能的なものではなく、とても情緒的なものだった。

深夜まで仕事をして、家に帰る。

鞄やコートを置くために寝室の電気をつけると、そこに現れる暖かそうな布団。

お風呂から上がり、寝室の扉を開けると、さっきまではなかった布団が敷かれている。

こんなとき、私の気持ちはとても和やかになる。その正体は、感謝と安心感だろうか。旅館で仲居さんが敷いてくれる布団を見たときと同じ感覚だ。

布団は、いつもそこにあるものではない。つまり、誰かが誰かのために準備をしてくれている。その「思いやり」が、ありありと、さりげなく、そこに佇んでいるのだ。それに気がついたときの気持ちはとても心地よいものだ。

ベッドは、いつもそこにある。生活の一部となるもの。だから、手間がからかず、機能的で、むしろ布団よりも体に良いのかもしれない。

それでも、私は布団が目の前に飛び込んでくる景色を気に入っている。

近頃は、逆に相手のために敷く楽しさもあることに気がついた。 お風呂からあがってきた奥さんがお布団を見て嬉々とするのは見ていて嬉しい。

布団は、いつもそこにないからこそ、そこにあるということは、誰かの行為が裏にあるということ。

そう思うと、布団はベッドよりずっと暖かくなる。

という書き込みを溜め込んだのが3日前だったのですが、一昨日に掛け布団が足りず風邪を引きました。

こちらの思いとは裏腹に、世界はときに優しくないのです。